2008年9月18日木曜日

新・仁義の墓場

『仁義の墓場』深作欣二)は、実在した狂犬ヤクザをモデルに作られた作品で、要所要所に資料映像が入る(ただし、殆ど捏造である。)『仁義なき戦い』以上の実録色を誇る怪作。「戦後の暴力史上最も凶暴といわれた“伝説の狂犬”石川力夫。16歳時の新宿の抗争事件から頭角を現し、21歳で親分を斬りつけヤクザ社会から「関東所払い10年」の制裁を受ける。特異な生き様を送った実在のヤクザの半生をダイナミックに描く。」(アマゾンから引用)

石川力夫の行動は、犯罪、犯罪、犯罪、と実在した人物とは思えない潰れっぷりである。
まさに仁義なき殺人機械。これは初主演だった渡哲也の最大の異色作であるといえる。
『仁義なき戦い』以上に暴れ狂う一発撮りと思われるカメラワーク深作欣二の実録ヤクザ路線の
持ち味を最大限に発揮され文句無しのやくざ映画の傑作である。

で、「新・仁義の墓場」(三池崇史)は、現在の日本に舞台を変えて、主人公の名を石松陸男に改めフィクションとして作られた作品である。

結論から言おう。本家を上回る超名作であり、邦画史において21世紀最初の凶悪な残虐暴力巨編である。
深作さんは、狂犬として石川を描いたが、三池さんは狂気として描いている。
わたしは大概のことにはビビらないが、本当に本作の石松陸男(岸谷五郎)には心底恐怖した。
石川力夫は遺骨を喰うなど常軌逸した行動で観客をドン引きさせたが、それ含めてある種の感情移入ができた。 救いようが無い滅びる絶対悪、その姿は常にどこか哀れだった。
だが、石松陸夫はそれこそ劇中の鉄パイプにぎって殴りかかってくる恐怖がビシビシと観客の脳裏に叩きつけられ、画面越しに恐怖した。それこそスプラッター映画の殺人鬼のような正体不明の恐怖と暴力の恐怖から、ありがちな部分、安心できるお約束を差し引いたた感じである。

次に何をしでかすかまるで読めない狂人の所業。誰も石松陸男の狂気と破壊から逃れる事はできない。

以下、全編見所の本作において特筆すべき見所。

ジョン・ウー作品へのオマージュで二丁拳銃で暴れる三池崇史
レイプ前に、カラオケボックスで「あーあー」と延々唸ってる石松陸男
ラリって爆音メタルのリズムに合わせて自室で銃を延々と乱射する石松陸男
鉄パイプで嫁の仇を取るツンデレな石松陸男
その後の戦利品をあさる不振な挙動
パンツ一丁で警官隊と互角に銃撃戦を繰り広げる石松陸男
銃撃戦の末、嫁の名前を連呼するデレデレの石松陸男

お勧めの作品

『仁義なき戦い・広島死闘編』・・・同じく狂人ヤクザ、大友勝利の残虐ファイトに注目せよ。
『野望の王国』・・・柿崎憲
『八仙飯店之人肉饅頭』・・・変態的カニバリズムを一切排した合理主義者のウォンの冷徹な狂気は石松に通じる物がある。

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