2010年4月5日月曜日

サマーウォーズ

@凡作

*完全ネタバレ

細川守監督による『デジモンアドベンチャー・ぼくらのウォーゲーム』の実質的なセルフリメイク作品。
『デジモン』はインターネット内部(デジタルワールド)を舞台に、コンピューターウイルス(悪いデジモン)に主人公らがデジモンと共に立ち向かうという内容だが、アニメの後日談で、主人公たちはデジモンと別れ、デジモンワールドにはいない。
そこでパソコンを使って再びデジモンと戦う。
とにかくガキの時分に見ても、傑作と確信している。インターネットの描写は先駆的だったし、ネットの接続に四苦八苦する主人公たち、そしてスピーディーなバトルには大興奮だった。

で、今やインターネットは持ってて当たり前の時代。携帯電話が21世紀のスイスアーミーナイフ例えられる今ならリメイクのタイミングとしては完璧だった。

テーマは「団結」や「家族愛」といった所か?ネット社会でコミュニケーションの低下が叫ばれているが、ネット自体は肯定的に描いて、このテーマを維持した事は特筆に価する。解決法を現実で見つけすぎという、評価もあるが、大事件はネット内部で起こっている以上、ヒントを現実で得る事は問題は無い。

キャラクターは主人公が数学の天才である事以外少々、無難すぎるが、“普通の一家の家族愛”という事なのでこんなもんか。ただし、ヒロインが全くに印象に残らない。ラストでケモノのアバターで緋牡丹博徒をするが、その頃にはもうお前誰だっけ?状態。
まぁ、そりゃこんな喧しい一家ならインターネットあっても無くてもコミュニケーションの低下は起こらねぇよ!

しかし、大家族たちはかなりのエリートか名職人集団。不景気な時代を反映した普通の家族というよりは、完全に理想の大家族。普通じゃないよね。
おばあちゃんも、パソコンが解らんからアナログ方面で対抗するんだが、実はおばあちゃん、日本のフィクサーで、政界のお偉方に渇を入れる。

そんな影響力でネットとアナログを対比させるよりも、公務に携わる家族たちに応援するのでも十分だったと思うのだが・・・・・・
しかし、基本的には見ていて楽しい一家だ。愛に溢れている。


しかし、インターネット世界の設定は明らかに雑だった。
「OZ」という世界的な巨大なサイトを舞台としているが、その巨大さはもう普通にインターネット空間に置き換えても問題なかった。なぜなら、OZを運営してる会社などの描写は皆無であり、まるで不要な設定なのである。正味、冒頭の解説以降全く掘り下げられない

で、米軍がよりにもよって、コンピューターウイルス(正確には最新型のAI)をその大サイトにばら撒く訳。コンピューターウイルスの攻撃力を調べる為にだ。なんで自分の国の人間も大勢参加してるサイトにんなもんぶち込むんだよ!
米国が事実を闇に葬るためにOZを破壊したら幾分現実的だが、少々ブラック過ぎる。こんな映画には求めていない。

だから、整理して考えてみれば、OZは元々、米軍が開発したサイバーテロの演習地だったという設定にでもしておけば良かった。そうすれば、超巨大サイトでも、そこにAI兵器が入ってきても問題無い。実は、AIの作者は一家の一人で(こんな使い方されるとはしらず)終盤、有利に事を運べたのだが、過去のウイルスの集合体を吸収し手の付けられない状態だったら、後述のスペクタクルももう少し緊張感があったと思う

また、このAIはゲーム感覚でOZと世界を混乱させているとされているが、やることが少々、合理的過ぎる。ラストで原発に向けて無人探査船を落とそうというスペクタクがあるが、もし、無人探査船を最初から陣内家に落とそうとしていたら、“対戦相手”に絞られたゲーム感覚悪役として強烈だ。一つの家を破壊するためだけに無人探査船を落とそうとするという豪華絢爛作戦には狂気さえ垣間見えたろう。そんで原発なんて話を無理に大きくする必要も無い。

既にインフラ・交通の一部が大混乱で、そのせいで、お婆さんの治療も遅れて亡くなっている。
だから、最後のスペクタクルは後付けにしても雑すぎるし、本作では核爆発なんてブッラクな事が絶対起こらないファミリー映画という事を、ここまでの流れで解っている。なので緊張感に欠けた。


あと、この映画の真のヒロインはカズマきゅん

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